About us
Designer/ Artisan 田外 桂子
- Our Story -
以下、よくいただくご質問にお答えする形式でお話しさせていただいております。
Q. 着物を使用して帽子づくりを始めたきっかけは何ですか?
A. たまたま図書館でみた着物市場縮小・後継者不足についての記事がきっかけです。
気になったので詳しく調べてみると、着物の3K問題 (着付け・価格・着用機会がない) や顧客の高齢化、呉服店の営業手法に不安や不満を感じていること、それから経済産業省のデータでは、特に若年層において着物をふだんのおしゃれ着として着たいと思う人たちが多く、またさまざまな理由で着たことがない人たちも多いことなど、着物業界の現状を知りました。
これは日本におけるデータですが、海外の人たちにとってもいくつか当てはまる問題と推測できますし、他にもいろいろな問題がありますが、着物を楽しんでもらいたい着物生産者と着物を楽しみたい消費者がいるなら、「その両者の想いをなんとか繋げたい」と思ったんです。
想いを繋げるために何ができるのか、どうすればみんなの生活の中に着物を取り入れてもらえるのか、着物に興味を持ってもらうためにできることは何かを考え抜いて、着物で制作したハットを日常に届けようと決めました。
Q. 長年されていたドレスなど洋服ではなく、なぜハットにしようと思ったのですか?
A. 理由は2つあります。1つは、着物への関心を引くためです。
例えば、この世に蝶が存在していなかったとして目の前に蝶が現れたら、とりあえず見ますよね?
網で捕まえて蝶を手にとり「これは何だろう、こんな模様してるんだ、こんな感触なんだ」とか、じっくりと見てもらえる。
つまり、まだ世の中にないものをつくれば、着物についてもっといろんな人たちに知ってもらえると思ったんです。
そこで、思い付いたアイデアをノートにすべて書き出して、世界中の市場を徹底的にリサーチして、当時まだ市場になかったのがハット(※)で、そうして生まれたのが KIMONO HAT です。
(※) 布帛帽子ではない、カジュアルにもフォーマルにも使える型物帽子
蝶は美しくて目を惹きますが、誰もがかんたんに飼える訳ではないので、着物をより日常に届けるためには、誰でも楽しめるもっとみんなに親しみのあるカブトムシや金魚となるものも提供しなければ、"着物=特別なもの" という感覚や着物の3K問題をクリアしたことにはならない、と考えてできたのが、誰でもどこでもビーチやキャンプなどのアウトドアまで使えて自宅で洗える、キモノバケットハットです。
もう1つの理由は、新たなニーズの創造です。
世界には、着物をリメイクした素晴らしいプロダクトがたくさんありますが、どのブランドもきっと着物へのいろいろな思いがあり、それぞれのブランドができるスタイルで提供しているはずです。
だとすれば、私がわざわざ同じことをして市場を奪い合うよりも、それとは違う着物の新たなスタイルを提供することができれば、着物生産者と消費者を繋ぐ接点を増やせますし、着物の可能性が広がることにも繋がると思いました。
Q. ハットは、ご自身が制作しているのですか?
A. はい。パターン作成、裁断、型入れ、縫製まですべて手作業で丁寧に制作しています。
当初は、ハットづくりの知識も経験もありませんでしたので、国内工場で生産する計画でしたが、布帛帽子 (バケット、ベレー、キャップなど布製の帽子) の場合はどこでもお請けいただけるのですが、型物帽子 (ボーター、中折れ、シルクハットなど、型を使用してつくる帽子) の場合は、とても手間がかかり職人さんの負担も大きいこともあり、制作が難しいなどの理由で断られて、お請けいただける工場がありませんでした。
このまま諦めるか、それとも挑戦するか、の選択に迫られて私は、できるかどうかわからないけどやるしかないと思い、独学で約一年間修業しました。
当初は、いろんな人から「着物でハットを創る? 世界に挑戦するとか無理に決まってるだろ。もっとまわりを見ろよ。」などいろいろ言われて、随分と悔しい思いをしましたが、挑戦する前から諦めていたら何も始まらないですし、何事も可能性はゼロではないと思っているので、寝食を忘れて型物の帽子づくりに没頭しました。
そして現在では、国内外のお客様から応援いただいて、世界中のお客様へお届けしています。
** フォロワー様には逸早くご報告いたしましたが、ようやくご協力いただける国内工場も見つかりましたので、今後はアイテムによって、工場生産のものと私が制作したものでの展開となります。(2022,07,07 更新)
Q. 日本製にこだわる理由は何ですか?
A. 国内アパレルにおいて、大手企業や中小ブランドが海外生産をする一方で、国内工場の相次ぐ閉鎖により、高い技術と経験をもつ職人さんが仕事を失っています。
技術や経験は財産だと思っているので、それってすごくもったいないですし、私もモノをつくる者の一人として悔しさも感じます。
そのためKeiko Tagaiでは、かねてより国内生産しており、すべての商品が日本製です。
日本独自のテキスタイル (着物) を使用して、ものづくりに情熱を注ぐ国内の職人さんの手によってつくり上げたプロダクトをとおして、日本の伝統とものづくり文化の素晴らしさや魅力を後世へ、世界へと伝えていきたいと思います。
- デザイナーより一言 -
私自身、着物を着たことがない人達の中の一人です。着物を洋服として着ることはあっても、着付けをして着たことが一度もなく、着物を着ることを楽しみにしていた成人式も訳あって着れず、ものすごく落ち込んで成人式にも行かなかったほどですから、着物への憧れが人一倍強くあります。
着物を着たくても着れないというのは、とても悲しい気持ちです。
洋服が主流となり、着物離れする忙しい現代人の日常に、着物を着物として届けるのは難しい事かもしれませんが、着物好きな人はもちろんのこと、着物を着たくてもさまざまな理由で着れない人、まだ着物に触れたことのない人、さらには、着物にあまり関心のない人も含めて、どんな人たちでも日本の伝統文化を楽しめるものを届けたくて、日々帽子づくりをしています。
着物を使用するにあたり、着物の歴史や製造工程、模様などいろいろと学んでいく中で、私は日本人でありながらも、着物について知っているようで何も知らなかったことにとても驚きました。
そして、日本には、こんなに素晴らしい宝物があることに気付くことができました。
着物でつくりあげたプロダクトを通して、日本の美と伝統文化を感じていただき、そして10年20年先に「着物を着てみようかな」と思っていただくこと、それが私の夢であります。
日本人として生まれたことを誇りに思い、帽子づくりを通して着物産業に貢献するとともに、日本の宝を世界と共有し、世界の一人でも多くの人たちに日本の美と文化を楽しんでいただけるよう、全力を尽くしてまいります。
Profile
1997年 | 独学で婦人服のパターン、縫製、デザインする |
2011年 | JON DALICHE 設立 婦人服全般フルオーダーの制作及び販売 |
2012年 |
KEIKO TAGAI 商号変更 |
2018年 |
帽子制作修業期間 |
2019年 |
海外展開 |
- メディア紹介情報 -
■ロシア国営通信社「Sputnik」にて紹介されました (2021/2/16)
インタビューでは、着物を使用するに至った経緯やスタイリングなど色々とお話しさせていただきました。
https://jp.sputniknews.com/opinion/202102168158712/
■「Tokyo Weekender」にて紹介されました (2020/11/19)
日本最古の外国人向け英語情報メディア「Tokyo Weekender」にて紹介されました。
https://www.tokyoweekender.com/2020/11/7-japan-based-brands-that-are-redefining-vintage-kimono/
■「SoreNews24」にて紹介されました (2020/11/5)
「日本のファッションブランドKeiko Tagaiが、美しい古着物をスタイリッシュな帽子に変える」とのコンテンツで紹介されました。
https://soranews24.com/2020/11/05/japanese-fashion-brand-keiko-tagai-turns-beautiful-old-kimono-into-stylish-hats/